FC2ブログ

    落語

    ここでは、「落語」 に関する記事を紹介しています。
    11月中に御神酒徳利を覚えようと思っていたものの、現在のところ8割ほどしか覚えきれていないため焦りに焦っている千一です。こんばんは。

    仕上げるのは今月いっぱい掛かりそうではあるので、ここから気合を入れなおして稽古していく所存でございます。

    いつ何処でこの噺を人前で掛けるかは未定。

    御神酒徳利が仕上がり次第、次は文七元結を覚える予定。

    メモ代わりに台本を載せておきます。


    御神酒徳利

    日本橋の枕町に苅間部屋吉左衛門という旅籠がございましてね、先祖に功労がございましたか青色の紋のつきました銀の御徳利を一対配当ということになっておりまして、青色の紋でございまして当時の将軍家のもの。庶民はこれを見たとき青い顔をしたそうで。この話のピークはここで終わりです。どうか一つ付いてきてくださると。
    12月の13日が裾履きの当日でもってこれは皆でもって大掃除を致しまして、大広場でもって御徳利を挟みまして、主奉公人の区別なく一年の労を労おうという。これが苅間部屋の吉例ということになっておりまして。
    今大掃除の途中でもってニ番番頭の善六さん。ちょいと喉が乾きましてね、台所のとこまでやってきまして、水瓶の前まで参りますと水瓶の蓋の上に当家のお宝でございます御神酒徳利がすぽーんってんで放り出してありますから
    おいおいおいおい、誰だこんなところにおい。当家のお宝じゃないかいけませんよ本当にまあこんなところに放り出してさ。何を考えてんだか本当に。今更閉まっちまう訳にも行きませんしねえ。ここに置いとく訳にも行きませんよ。誰かに持って行かれでもしたらねぇ。弱ったもんですな。どうしようかね、あっそうだ。
    ってんでどうしたかと申しますと、この御徳利を水瓶の中にすぶずぶずぶ、ずぶずぶずぶずぶってんで二本とも沈めてしまいます。これなら大丈夫だろうってんで自分の喉の乾きを癒やしますってえとこれから掃除に取り掛かります。
    日の暮方になりまして旦那が
    まぁまぁまぁあのね、いいんだいいんだ。掃除なんてキリのないもんだからね。そろそろなんだキリの良い所で片付けてえぇ、御徳利をね、広間に飾ってくださいよ。御徳利をお前が持ってきてくれたのかそうかそうか、ど、どうした。はっ?紛失をした?御徳利を、おいおいおい。何を馬鹿な事を言ってるんですよ。はぁ?当家のお宝じゃないか。ちょちょいと待っておくれよ。ちょいと誰か見なかったかい?御徳利を。え、おい、紛失ってのは勘弁しておくれよ、おい善六お前なにか御徳利を見なかったかい!
    この善六さんてぇ方はね、大変に悪い癖がございまして、一つのことに夢中になるってえともう片方はすっかり忘れてしまうという悪い癖がございますんで、自分が水瓶の中にずぶずぶずぶってんて沈めておりますことをすっかり忘れておりまして
    旦那が御徳利を見なかったかい!
    一向に存じ上げません。

    うわぁあぁあぁ冗談じゃないよあたしの代で御徳利を紛失。御先祖様に何と申し上げたらいいんだ。勘弁しておくれ。御馳走どころじゃない。布団を敷いとくれ。あたしは寝るからーってんで、布団の中でガタガタガタガタ震える。

    おい、おっかあ今けえったよ。
    あら早かったじゃないか。今日はなんじゃないの。お店でもって御馳走になってくるんじゃなかったの。
    そうなんだよ、それがてえへんな事になって、あそこのお宝、御神酒徳利が無くなっちまったんだ。あぁ?えれえ騒ぎだよ。旦那は真っ青になって布団の中でガタガタガタガタ震えてるとても御馳走どころじゃない。それでけえって来たとこういう訳だよ。こっちはおめえな、夜にわーってんでやろうと思うから昼間軽くしといたんだよ。腹が減ってしゃあねんだ。なんでもいいや、ちょいとな糠味噌取ってよ、ちょいと掻き回して茶漬けでもなんでもいいから腹減ってしょうがねんだよ。ハッハっ。驚いたなどうもな。どこに言っちまったんだろう。本当にえぇ。また喉が乾いちまって、いい、いい。糠味噌の中手ぇ突っ込んでんだ。自分でやるから。へっへっへっ、いやー御徳利なるものは本当に おっかぁ!!
    あーびっくりした何だ急に大きな声出してどうした
    うっうっうっ、御徳利があった
    はい? うちにあるわきゃない
    そうじゃねえんだよまた悪い癖が出た。えぇ、昼間に喉が乾いて台所に行ったんだ。そしたら蓋の上に御徳利が放り出してあるじゃねえか。誰かに持ってかれでもしたらと思ってさ、だからよ俺はいい考えだと思ったんだよ。御徳利をぶくぶくぶくってんでな二本とも沈めちまって蓋閉めてこれなら大丈夫だろってんでさ。それすっかり忘れちまってたんだよ。なぁ、旦那に御徳利を見なかったか!って言われたときに
    一向に存じ上げません、なんて事を言っちまったんだ。おいどうするよはははーっ、おっかあどうしよう
    しょうが無いわねこの人は本当にまぁ、いいよぉ、正直に言やいいじゃないか
    そういうわけにはいかないんだよおめぇ。俺は二番番頭だよ。二番番頭がそんなしくじりしたら後で小言が効かなくなるじゃねえかなぁ。おっかあこの通りだなぁ。おめえが謝りに行って。
    あたしが? あたしが行くの?
    そうなんだよ。おめえがな、亭主の粗相は女房の粗相でございますってな、どうやっても勘弁できねえとそう云われたら、仕方がねえからおめえが坊主になって。
    冗談じゃないわよ本当にもう。じゃあ仕方ないからさ、今から行って、こういう風に言ってやんなよ。あれから家に帰りまして家の整理をしておりましたら、納戸の整理をしておりましたら、妙なものが出て参りましてこれが占いの巻物でございます。ねっ、いい?大丈夫かい?占いの巻物でございます。これがまた不思議な事が書いてございまして善六、生涯のうちにそうだね一つってのは色っぽくないからね、なんでも物事は三度って言うからさ、善六生涯のうちに三度どんなものでも当てるとしております。これがそろばん占いでございます。ねっ、お前さんそろばん得意だから。ぱちぱちぱちって弾いて。なんでもいいんだからぱちぱちぱちって弾いて、こっからが大事なんだよ。旦那、ごりいざんというけがでました。これが変更致しますと、山水網となります獰猛我を求めるはこれを求めると申しまして、ご当家の戌亥の方。水と土とにご縁のあるところに御徳利かあると出ておりますとこういう風に言うんだ。んんっ、戌亥の方つったら台所だろ? 水と土とにご縁のあるつったら水瓶じゃないか。ほんでもって水瓶のとこまで行って、蓋を取って、あっ旦那ありました! これでいいじゃないか。
    そりゃおめえの親父ってのはね、占いの先生だったからよ好いけど俺は素人
    素人も玄人もそんなことはどうだっていいんだよ。本当にまぁ、お前さんの首が飛ばないかのさ一刻を争うんじゃないか本当にもう。いいから行っといでー!
    なんてんで勝ち気なおかみさんに送られましてまた戻ってまいりまして
    あぁー、なんだ煩いなぁ。御徳利が無くなっちまったんだ。善六だろうがなんだろうが、なんだ? 御徳利の在り処が分かった。本当か。御徳利の在り処が!善六を直ぐに呼びなさい! 善六、善六!!
    はっ、どうも、だあさま。えぇ、なんでございまして
    善六、なんだお前御徳利の在り処が分かった!
    いやいやいや、分かったというわけじゃないんでございますけれども、あれから家に戻りまして納戸の整理をしておりましたら妙なものが出て参りましてこれが占いの巻物でございまして、これを開けてみますとまた不思議な事が書いてございまして、善六生涯のうちにさ、三度。三度どんなものでも当てるとしてございまして、これがそろばん占いでございまして
    そろばん占い? 聞いたことがないぞ。何でもいい御徳利の在り処が分かるなら早速やってくれ!
    いえいえ私もなんでございまして、巻物に書いてございましたんでね、えぇ、早速やっちゃあみますが当たるかどうかは分かりません。しばらくお待ちくださいまして。
    えぇ、チェッチェチェチェ。チェチェチェチェチェ。はぁはぁ、旦那なんでございますな。このごりいざんというけが出たんでございますね。これが変更を致しますと山水網となるんでございます。えぇ、これが獰猛我を求めるはあれを求めるは、えぇそれを求めるはこれを求めるは
    それは色んなものを求める?
    えぇ、色んなものを求めるんでございます。とどのつまりが何でございます。ご当家の戌亥方でございまして、水と土とにご縁のあるところに御徳利があると出てございますけれども、えぇご当家の戌亥方と申しますと、台所でございますね。じゃあ台所の方に皆さんで行ってみましょう。台所でございまして、えぇ台所にございまして水と土とにご縁のあるところ、ハッ!
    この水瓶、土で出来ておりまして中に水が入っております。水と土とにご縁のある、まさかこの中に御徳利があるとは思えませんが占いにそう出ておりますのでわたくし蓋を取りましてですね、中を覗いてみましてですね、まさか御徳利が あぁーっ!! 旦那、ございました!!

    あるわけだよ。テメエで入れたんですから。
    ところが旦那の方はそんなの関係ございませんで
    善六のおかげではっはっはっはっ、御徳利が出た。良かったじゃないか。用意してな御徳利をお座敷に飾ってこれから何ですよワーッとやりましょー!
    なんてんで呑めや歌えやの大騒ぎで
    普段は裾履きでございますからお客様はお断りするんですけれど、特別にお泊りをしておりましのが、大阪は鴻池全右衛門の店の御支配。当家が上宿というわけになっておりますので。
    (2回叩く)へーい
    お手が鳴る。
    はっはっ、良い、お前たちは良い。ゆっくり飲んで構わないから。御徳利が出たお祝いだあたしが御用を伺ってくるから。いいんだ、いいんだ。ゆっくり飲んでて構わない。はっはっはっ、えぇ失礼を致します。御支配お呼びでございましょうか。
    おうおう、これは主自ら恐れ入りますな。はっはっはっはっ、伺いましたよ。当家のお宝御神酒徳利が紛失をして、二番番頭の善六さんがその在り処をそろばん占いでピタッとお当てになったと。
    はっはっ、御耳に届いてございますか。作用でございまして、あの物にあの様な特技があるとは梅雨ぞ知りませんで、いま皆で喜んでいるところで。
    あぁそうでしょうなぁ。宜しゅうございまして。いやいやいや、主、どうぞもそっとこちらの方へ。お前さんに話があるんだ。来て頂いて話が早い丁度良い。どうだろうね、ちょいと善六さんを貸しちゃ貰えないかね。
    善六をでございますか。如何なさいました。
    いやーぁ、話をしてなかったかね。当家鴻池、今年17になる娘がおりましてな、あぁ3年前からのふらふら病。これがどんなご名医に観て頂いたところが病名が分からない。生き死にが分からない。この度江戸に出てきたのもね、まぁ商売の事もあるんだけどね、お医者様を探しちゃいるんだけども、どうでしょうな。ん、善六さんにね大阪までご同行頂いて、そろばん占いで娘の病名、生き死にをピタッと当てて頂くわけにはまいりませんかな!
    それはお困りでございましょう。ねぇ、善六でございましたらお力になれると思います。お任せくださいませ。直ぐに話を付けて参りますので。いやいやなんでございます。直ぐでございますのでね、暫くお待ち下さいまして。はっはっはっはっ。善六(三回叩く)善六
    うぃ、うぃうぃうぃ、おいしょー!おいしょっ!はっはっはっー!いやー結構じゃないですかいやいやいや良い心持ちになっちゃった。はははははっはっ、ど、どうっすかあっしのそろばん占いのうでめえは
    あぁ恐れ入りました頭下がりますよ。で、善六な今御支配人がな
    え?御支配人の御耳にも入りました?ハッハッハっハッハッハっ!ご祝儀か何かくれようっての?ありがてえどうしました?え?なになに?えぇ、えぇえぇ、えぇえぇえぇ、え? えっ? え? ちょちょちょ、ちょっと、ちょっちょっちょっ、あの引き受けて来たんじゃないでしょうね!
    何を馬鹿な事を言ってんだい。えぇ? お前がお役に立てる相手は鴻池様じゃないか! そろばんパチパチっと弾いてお嬢様の病名生き死に
    ちょっちょっちょっちょっ!簡単に伺っちゃだめだよぉ、ダメダメダメダメ。あたしに聞かなきゃ駄目だよぉ、そんなの、そ、そ、そうですよ旦那ダメ。絶対ダメです。あのな、そろばん占いは確かにどんなものでも何でもって、そう言ったんですがね、おしいなぁ!病気はダメなんすよ。
    それは出し惜しみって奴だよ。いいじゃあないかさ。お前だっていつまでも二番番頭ってガラじゃないよ? いつかは大家の主になろうって男ですよ。相手が鴻池様だぞ?いいじゃないかさ、そろばんパチパチっと弾いて、いいからそんなこと言わない
    ちょちょちょ待ってください待ってください勝手に決められちゃ困るんだよ。いや、だからちょっと。そうですよ、大阪ですから遠いですから、やっぱりかかあに相談をして!
    おぉそうかそうか、直ぐに女将さんに話をして。あっ、いいんだいいんだ。支度から何からすっかりこっちの方でやっとくから、手ぶらで持って戻ってくればいい。なっ、女将さんに話を
    えぇ分かりました分かりました!とにかくあれですよ、勝手な事しちゃいけねんで、かかあに聞いてきますから行ってきますよ!

    駄目だ。えれえことになっちゃった。夜逃げするしかねえかなえれえことになっちゃった。おっかあ、いま行ってきた。
    あらまぁ!しくじったのかい。
    あぁ、しくじったんじゃねえんだよぉ、上手く行き過ぎた!
    上手く行き過ぎた?どうしたんだよ。うんうんうん、うんっ良かったじゃないか。御徳利があって上手いことやったよ、うん、え?御支配人が?うん、うんうんうん、あらそう、まぁアッハッハッハっハッハッハっ!そうなのー!なっはっはっはっはっはっ、行っといで。
    おめえねえそんな呑気なもんじゃねえぞ。お嬢さんが水瓶に沈んでるわけじゃねえ。
    いいんだよぉ、おとっつあんがそう言っといたよ。もうすぐ死んじまう人は死相ってのがあるんだ。だから、後でもっておせえてやるから、それでいいんだよ。それでもっていいかい。この一言さえ覚えておけばなぁーんとでもなるから。良い? この一言忘れちゃいけないよ。肝心の一言だから。良い? これはね、これは人間の力が及ぶところではございません。魔法の一言。これさえあれば何だっていける。いいじゃないかさ大阪だろ一生に一度?行けるか行けないかじゃないかさぁ。あたしも一緒に付いていきたいぐらいだよ本当に。行っといで!ふはははははははーっ!バンザーイ!!
    妙な女将さんに送られてね、大阪に向かうことになりまして、七(ひち)に参りましたのが神奈川じゅくでございまして
    えぇ善六先生、本日はなんでございます。こちらの播磨屋権兵衛にお泊りを頂けることとなりまして。ハッハッハっまだ日がたこうございますけれど、えぇ宜しゅうございましょう。おや、おやおや、どうしたんでございましょう。木戸が閉まってございますな。ほほっ、暫くお待ちを頂きまして。
    (三回)おいおい(三回)誰かいないのかい(二回)開けとくれ(二回)あたしですよ(三回)鴻池の者だが(三回)開けとくれ
    御支配がお戻りになられた。どうぞ戸を開けて。まっ、御支配!お早いお戻りでございます。
    どうしました女将さん、あぁ?こんな木戸なんぞ締めて。えぇ?何かありましたか?
    うっうっうっ、御支配、御支配が江戸へお立ちになった翌日に手前共に大変な災難が振りかかってございます。島津様のお侍様がお泊りになったんでございます。そのお侍様がお巾着を紛失なさったんでございます。その中の金子でもって50両、それから島津様から工藤様への密書とやらが入っているそうで、お金の方はなんとか致しますけれど、その密書とやらは庶民の預り知れぬところ。外から賊が入っておらず店の者に嫌疑が掛かっております。主が敷かれて参りましてお巾着が出ない内は主の一命にも関わる一大事でございます。
    あらそうですか。それは大変な災難だ。えぇ? それはねお金の方は私も何とかできますけれど、その密書とやらはねえ。それは大変な物を紛失
    (善六を見る)
    (善六首を横に振る)
    (善六を見て首を縦に振る)
    (善六、バツ印でアピール)
    女将さん、女将さんあなたツイてる。なにがじゃあない。今ね、ご同行頂いて江戸で大評判のそろばん占いの善六先生! そろばんパチパチっと弾いただけでどんなものでも何でもピターっと当てる。特に紛失物が大の得意!なんですよ、直ぐにお願い致しましょう。先生、お聞きのとおりです如何でございましょうか。どんなものでも何でも3度のうちあと2度残ってらっしゃる。一度使って頂くわけには、危機を救って頂くわけには参りませんか。
    ハッハッハっハッハッハっ。いいですよ。分かりましたハッハッハっハッハッハっ。やりましょう、ねぇ。ハッハッハっ。はぁーぁ、ただね何でございますからね、あのねどんなものでも何でもってねパチパチってね物が物ですからね、占いの行をたてないてとねどうにもなりませんからえぇ。ちょっとおうぎょうにやらせて頂きますよ。えぇ、そうですねここで離れはありますか、そうですか。ちょっと離れの方にお願い致します。えぇ、ここ離れね。あっそうですか。うんうん、あっ向かう一面の畑でもってあっそうですか。あっあそこ何ですか畑の向こう側街道? あっそう。江戸はどっち? いやいや占いの神様そちらからおいでになるから聞いているだけで。江戸はあっちそうですか。江戸はあっち分かりました分かりました。じゃあね分かりましたここでもって静かなところが良いから占いの行を立てさせて頂きますけれどもねっ、色々とあの贈り物が入りますのでね、あぁ御賽銭をありがとうございます。そうそうそうそう細かいお金が良い。御賽銭ですから。大きいと使い難いですから。細かいのが。細かいのが。それから贈り物を、あぁお魚はいけません生物はいけません。占いの神様お好みなのはね、あのね、おにぎり。塩を絡めにしてねキツく結んで頂いてタケノコに包んで頂戴。それを風呂敷に包んで頂戴。背負いやすいようにして。そういうのお好み。いや占いの神様それがお好みだから。それからね、あっ、替えの草鞋も欲しいな。それからね、あっ笠も欲しい。あとそうですね、夜道が暗くなるといけないから提灯。ここの紋が付いてないやつ。中に替えの蝋燭どっさり入れといて。いやそういうの占いの神様お好みなんですから!お願い致します。それから、そんなもんでいいでしょ。あぁ、支度できました?あぁ、ありがとうありがとう。じゃあこれから占いの行を立てますけれどね、占いの神様大変に人見知りでして誰もここに寄せちゃいけませんよ。あたしがねお呼び致しますから、あたしがね手を叩きましょうポンポンてんで手を叩くそれが合図ですからそしたら皆さんどかどかとこちらの方へおいでくださいまして、そしたら分かってますから、それまではいいですか、どなたもここに寄せちゃいけませんよ。それだけはお願いしましたよ! それじゃあ皆さん向こうの方へ。どんどん向こう方へ行って頂戴。はいはい、そこピターっと締めて誰も入ってきちゃいけませんよ!
    だからヤダつったんだよ。カカアの野郎畜生めこんな事でもなるんじゃねえかと思ったよえぇ?分かるわきゃねえじゃねえか本当に。まぁいいやな、日が暮れたところでスッてんでズラかるかってんでやっておりますと、そのうちに日がとっぷりと暮れてね、奴さんは身支度を整えましてそーっと窓から抜け出してね、これからさぁ逃げようと言うときに、廊下の向こうの方からギシッギシッギシッどんどんどんどんこちらに近付いてくる。
    (床に音を出して手をつく)あっ、来た。馬鹿こんちくしょう。来ちゃいけねえってそう言ったろ?本当にどうしてくるのそうやって(荷を解く)来ちゃいけないって言ったでしょもう。何で来るの本当にもう。誰?誰?
    先生様! この宿の女中でお巾と申します!
    お巾だか雑巾だか知らないけど来ちゃいけないってそう言ったでしょ!どうしたの!
    先生様!お巾着盗ったのオラでごぜえます!
    こっちいらっしゃい。こっちいらっしゃい。そこピタっと締めて。こっちいらっしゃい。なにかいお前がお巾着を盗ったのかい。
    先生様、話だけでも聞いてもらいてぇ。うちのとっつあま患い付いて、なんでも人参てたけえ薬飲ませなきゃなんねえで旦那様に話をして集金前借りして送ってやっただけども直ぐにやっぱり無くなっちまって、おらとっつあまの側に行ってやりてえ行ってやりてえと思ったんだけれども、今この忙しいときにお前に居なれては困る辛抱してくれって言われちまってさ、オラさ、島津様のお侍がお泊りになるときに悪い事とは知りながらお巾着盗っただよぉ、そしたら店が大騒ぎになって、だあさま役所に敷かれちまってオラどうすべぇどうすべぇと思ってしたところに今日、江戸からえれえ占いの先生が来てよ、そろばんパチパチっと弾いただけでどんなもののなめえから何から分かるつってオラどうすべえどうすべえって思って、先生様よ、もうそろばんの上にはオラが盗ったということは現れておりますでしょうか。先生様!
    ちょっと待ちなさい。チュチュチュチュ。
    出てる。分かんないかい?お巾と出ている。でもね、よくお前さんの方から自分から打ち上げてくれました。結構な事だよ。これはね、みんなそろばんの中に出てますよ。出ているけれどもあえてお前に聞くんだよ。お金は使っちまったのかい?
    とんでもねえこって、オラ恐くて恐くておそろしくて去年の八月の十五日、大嵐ありましてな、裏のお稲荷さんおっ壊れまして、そこのお社の下にまだ隠してごぜえます。
    まだ、使っちゃいないんだな。そうかそうか。分かった。うん、よく話してくれました。悪いようにはしないから、悪いようにはしないからいいかい。ここへ来たことは内緒にしなさいよ。ここへ来たことは内緒にしてあたしとお前さんだけの秘密だ。お前さんだけに悪いようにはしないから。皆さんに気づかれないように。そこピタっと締めておくれそうだそうだ。うん、うん、はいっ、はいっ。
    ありがてえ。ハッハッハっハッハッハっ!こんなことになるとはありがてえ!早速みんなを呼ばなきゃいけねえや!
    先生のお手が演るズラーッとみんなやって参りまして。
    さぁさぁさぁ、今ね占いの神様お帰りになったところですからね。えぇ、今そろばんに出ました。ちょっと待って頂戴ね。チュチュチュチュチュチュチュ。はぁ、なる程外から賊が入ったわけじゃあない。あぁー、この屋の方がねお盗りになったとこう出てますよ。おう、この家にお巾さんて女中さんいるかな。
    先生おります。お巾の奴が!
    いやいやいや!ちょっと待って頂戴。たしかにお巾さんが盗ったには違いないんだけど当人の預り知らぬところとしてあるんだな。ねぇ、これはどういう事ですかねちょっと待って頂戴ね、チュチュチュチュ。おっ、去年の8月の15日だな、大嵐があって裏のお稲荷さんのお社が壊れたとあるな。これは直ぐに修繕はしたんだろうね。えっ?まだ?まだ手え付けてないのか。何にもしてかい。えっ、それじゃあないかな。んっ、それお稲荷さん怒ってんだよ。ちょっと待ってください。チュチュチュチュ。あぁ、そうだ。お稲荷さんに聞いたところが怒ってますよぉ、稲荷だけにコンコンと怒ってる。お稲荷さんがお巾さんに乗り移ってイタズラをしたとこういうわけだなぁ。そらね、お巾さんの心に乗移られた何か心配事があるんじゃないのかね。あぁ、いいから言ってご覧。おとっつぁんが患って直ぐにでも側に?あぁ、それだ間違いない。そういう人のとこへスーッてんで入っちまうんだ。だからお巾さんが盗ったわけじゃない。お稲荷さんが怒ってらっしゃるんだから。え?お巾着はね、間違いないよ。お稲荷さんお持ちだ。チュチュチュチュ。ほーらほらお稲荷さんまだお持ちですよ。誰かね、お稲荷さん言ってご覧。お社の下を覗いてご覧。お巾着があるはずだから。どうした若い衆。あったかい!
    先生! ございました!
    そうだろう!あったろう!あたしの占いなんてざっとこんなもんですよ
    まぁなんとか面目を保ちまして、まぁ主が戻って来るまで高待遇を受けまして、いよいよこの大阪へ乗り込んで来るわけでございますが、もう一つが上手く行ったんですからあとのもう一つこれもなんとかしたいと思いますが、まぁなんともなりませんから仕方がないから3日ち二十一日の間裸足参りってやつで満願の当日を迎えますと当人ヘロヘロになっておりまして
    ハッハッハっー!あぁ、なんとかならねえなかぁ。ボーッとしているところに一神の風がファー!と吹いてまいりますと、ヒョロヒョロヒョローっと現れましたのがご老体でございます。
    なんだおい急に爺さんが出てきたよえぇ。なんでございますか、こちらの鴻池のご隠居さんでございますか。
    さに非ず。我は神奈川滝の橋新羽屋稲荷大明神なるぞ
    はぁ、お稲荷さん?なんでございますか、大阪に出替え帳ですか?
    さに非ず。その方優る日公女を助けんとてその罪稲荷に擦り付け恐れ入ったるぞ。
    へ?ちょっと待ってください。あっ!ハッハッハっあの神奈川支部の新羽屋のお稲荷さん。どうかご勘弁くださいませそういうわけじゃねえんでね、命ばかりはお助けを!
    さに非ず。その方の事らいにより新羽屋稲荷は霊剣あらたかなるとて日々参詣人は増え荷は積もりゆくばかり。稲荷その方に何か礼をと申せしがそちは人間八千八戸絵の隔てあり。この度当家の娘の病平癒。そは人間の力のあたわざるところ。世が一品力を貸し与える。よーく承れ。その後の大阪(おおざか)という土地は難波堀江と申して一円の入り江なる。昔聖徳太子守谷の大臣(おとど)仏法を争い守谷の大臣多くの仏像金具像をこの入り江に投げ込む。埋もり埋もって大坂となる。当家は大家である丑寅の方三十三本目の柱三尺を掘り下げよ。観音の仏像現る。それを崇めよ。娘の病たちまち平癒ゆめゆめ疑ごうことなかれ。ぜんざいーぜんざいー。
    ははーっ、(床に手をつく)あれ、うとっとしちまった。えぇ、なんだい何か妙な夢を見たな。ハッハッハっ。爺さんが出てきてなんか言ってたよ。その後の大坂と言える土地難波堀江と申して一円の。なんでこんな言葉がべらべら出てくるんだ。はっ、新羽屋稲荷のご利益だよ!ハッハッハっーありがてえ!こりゃさっそくやらなくちゃいけねえ。トーントーンてんでわーっ鴻池の主奉公人皆うわーーーーーーっ山のようにいる中で当人すっかり神がかって参りまして、
    よーく承れぇ!!その後の大坂と言える土地難波堀江と申して一円の入り江なる。昔聖徳太子守谷の大臣仏法を争い、守谷の大臣多くの仏像を入り江に投げ込む埋もり埋もって大坂となる。当家は大家である。丑寅の方三十三本目の柱三尺を掘り下げよ観音の仏像現るそれを崇めよ娘の病たちまち平癒なるべ夢うたごうことなかれぇー!!ぜんざいー!!おしるこー!!

    これから言われた通り、なる程三十三本目の柱の下を掘り下げてみますと、カチッと当たるものがございます。これを掘り出してみますと言われた通り観音の仏像でございまして、これで祠を拵えまして困った人には施しをしようという。観音のご利益でしょうか施しの功徳でございましょうか、この娘さんの病こらぁもう薄紙を剥がすなんてもんじゃございません。厚紙を剥がすようにバリバリバリーってんでよくなりまして、はぁー鴻池の旦那様が喜ぶこと善六先生善六先生と下へと向かないもてなしに大阪中の見物を済ませまして、帰りは京都へ寄って名所の数々。これから東海道を下ってまいりましてまたも大津や草津のあいの土山通り墨田を超えれば亀山塾。ひいふうみっつ四日市。いつかふわなに船漕いで赤坂に。中もよしなや白洲が新井。願えよ掛川。加賀屋の夜。瓶のほつれの島田を過ぎてとは名高きみまづの郷。富士三代酒名物を一つ召せ召せ籠に召せ。箱根へ超えれば小田原折も保土ヶ谷。神奈川の新羽屋稲荷大明神にお礼参りを済ませますってえと道中筒がなく江戸へと戻って参りまして。

    おーい、いまけえったよ!
    あっはっはっはっ、お帰りなさい。まぁー聞いたわよ。大変な活躍だったそうじゃないか。
    ハッハッハっハッハッハっ、まぁーありがてえやな。なにしろほうぼう連れて行かれてな。あれ食ってくれこれ食ってくれってそう食いきれるもんじゃねえ。そんな話はな後でまたゆっくりしようじゃねえか。えぇ、中にね運び込んじゃってくださいよ!おっかあ、色んな物を貰ってきた!これなんか白絹十匹だよ!
    まぁー十匹なんてお前さんノミなら大変!
    ハッハッハっ、これはなんだ当座のお礼。当座のお礼だってんで三百両貰ってきたよ!
    まぁ、三百両なんてありがたいじゃないかねえ。お前さんなんだね、これもみーんな新羽屋稲荷大明神のおかげだね!
    なぁに、かかあ大明神のおかげ。


    スポンサーサイト



    おそらくこれを読んで得するのは片手で数えるぐらいしか存在しないと思いますが、
    熊の皮を文章化したものを記事にしております。

    私の十八番ネタなので、まぁあれだ。備忘録代わりにね・・・。


    違うの。ブログを更新するネタがないとかそういうのじゃないの!

    なんとなく落語の記事そういや書いてなかったなぁと思ったから書いたの! 手抜きじゃないの!!


    あと出来心とあくび指南と動物園も手元に文章化したものあるけど、これはおいおい更新するネタがなくなtt・・・

    き、気分が向いたときにブログに書きますね!!


    『熊の皮』 

    甚平:おっかあ、いまけえったぞ。おっかよ、いまけえってきた。 


    女房:あらぁ! どうして帰ってくるのお前は。

        いいよ帰って来たってここお前の家なんだから。

        いいけどまだ昼回ったばっかりじゃないか。

        こんな時間に帰って来るんじゃない。仕事しろ仕事。


    甚平:鼻で喋んな馬鹿。

        俺がけえって来たのには訳があんだよ。

        見てくれよ車の中。何にも残ってねえんだよ。

        今日は良い日なんだよ。表出た途端だよ。

        方々から声が掛かってみんな売り切れちゃったんだよ。だからこうやって帰って来たんだよ。


    女房:そういうこと早く言いなさい本当にもう。

        本当に売り切れたの? 

        どっかに捨ててきたんじゃないでしょうね。売り切れたの? 

        あらそう。そんな良い日もあるのね。

        あらぁそうなの。ふっふっふっふっふっふっふっ。

        ご苦労様。

        ぼんやりしてんじゃないよ。折角早く家に帰って来たんだから家の仕事しなさい。

        水汲んどいで。


    甚平:水? 水ぐれえなんだろ、俺が仕事行ってる間に女房のおめえが汲んで来たらいいだろ?


    女房:何言ってんだよぉ。

        あたし今起きたばっかしなんだよ。

        お前そこ立ってんだろ。あたし座ってるんだから。

        お前の方が井戸端に近いんだよ。井戸端に近い人が水汲んでくるんだ。

        いいから行くのなーんか言わなくていい。

        ダメだ! 桶片っぽだけ持つんじゃない。両方の手に持ちなさい。

        その方が持ちいいでしょ? いっぺんで済むでしょ? 

        そういう要領覚えなくちゃいけない。ダメなんだからね本当に。

        行ってきたの? 行ってきたの? 

        ご苦労様でした。

        じゃあそこの水瓶の中に溢さないように。溢さないように綺麗にそうそうそう。

        ご苦労様。

        お釜の中にお米計ってあるでしょ。研ぎなさい。


    甚平:研ぎさないって、俺が水汲んで来たんだから米はおまえが研いだらいいだろ?


    女房:あら知らなかったの? 

        水汲んできた人がお米研ぐの。

        そしたらお米が喜ぶんだから。

        いいからやるんだよ。やんなきゃ覚えないか。

        がたがた言うんじゃないの。

        口動かさないで手を動かしなさい手を。

        本当にまぁ、そうそうそうやればできるじゃない。

        なかなかいい手つき。

        それで水の計り方も教えたでしょ? 

        そうそうそう。

        それでもって竃にかけて。竃にかけたら火はいじんなくていいの 火は!! 

        どうしてそうやっておせえてないことやろうとするのお前は! 

        そんな気が回るんだったら隣ご覧。

        タライ中洗濯物が山になってるんだからさ。洗え。


    甚平:いい加減にしろこの野郎。洗濯は女房の仕事。


    女房:うるさいっての。

        あたしはのべつやってんだからさ。

        たまには帰ってきたからやるんだ本当にもう。

        今手に取ったのあたしの腰巻なんだからちゃんと洗うんだよ。えぇ? 

        そうそうそうそう。きちんと濯いでね、かたーく絞って。

        まだお日様出てるんだから日のよく当たるところに持ってって干してくんのよ! 

        干してきたの?


    甚平:干してきた!


    女房:どこに干してきたの?


    甚平:お日様が一杯当たるところがいいってから、お稲荷さんの鳥居に干してきた。


    女房:どうしてそういうとこ持ってっちゃうの。あたしの腰巻だよ? 

        いいわよ後で取り込んでくるから。

        だめだまだ上がってきちゃ。

        もう一仕事あるんだから。

        今から横丁の先生のとこ行っといで。


    甚平:なにを?


    女房:先生のとこ行っといでってえの。

        なにかじゃないよ。

        先生のとこから頂き物したのよ。お赤飯頂いたのよ。

        先生お屋敷にお出入りしてるでしょ? 

        お屋敷でもっておめでたいことがあって色んなもの頂戴してね、

        お裾分けだってねお赤飯くださったの。

        いや一杯ってことはないわよ。

        お長屋中に配ってんだから。うちはひとかだけ。

        ねっ、だけどさ、これお礼言ってきてちょうだいよ。


    甚平:こんなもんだろ? 

        こんなもんだったらいいよわざわざ行かなくたって。

        今度会ったときに先生ご馳走様でした。それでいいじゃねえか。


    女房:マトモな人はそれでいいんだよ。

        お前さんマトモでない人だからきちんとした挨拶っての教えてあげるから覚えるのよ。

        良い? お前さんみたいな人はね、先生のとこ行ったらね、

        表から入るんじゃないの。裏回りなさい。裏へ。

        裏に回ったら書生さんって若いは人がいるでしょ? 

        ねっ、あのね若い人にね、いつものように先生いますかとかそういう言葉遣いしたらダメなの

        丁寧な言葉遣い覚えなさい。

        先生はご在宅でいらっしゃいますか? って聞くの。

        もっぺんやるわよ。先生はご在宅でいらっしゃいますか。

        もうこの辺でお前さんの頭一杯一杯だと思うけどね、この先があるから覚えるのよ。

        いい? 先生の前に出たらね、こういう形になるの。前に手を付くの。

        ねっ、はなはね、承りますればって言うの。

        もっぺんやるわよ。承りますればってやるの。

        意味なんかどうでもいいの! 音で覚えなさい音で。

        お屋敷からお到来物だそうでおめでとうございます。

        御門多い中手前どもまでお赤飯をありがとう存じますってきちーんとこうやって頭を下げて、

        一番お終いに、女房が宜しく申しておりました。

        ここが肝心。ここ忘れたらただおかないわよ。

        覚えたら行ってらっしゃい。忘れないうち行ってらっしゃい! 

        ちゃんとやんのよ! 後で出来たかどうか聞くからね!


    甚平:うるせーこの野郎。

        冗談じゃねえな本当に。

        だいたいなんだよ亭主の俺が我が家でああも緊張しなくちゃいけないんだ。

        我が家じゃねえかな。本当に冗談じゃねえやな。

        あんなかかあじゃなかったんだはなは。えぇ? 

        所帯持った当座はあなたやなんか言ってくれたんだ。

        いつの頃からか変わっちゃったね。

        あるとき俺の事をおいって呼んだよ。

        そんときうっかりはいって返事しちゃったあれからおかしくなっちゃった。

        みんな言うんだ甚平さんは女房の尻に敷かれてる女房の尻に敷かれてるって。

        俺、はな褒められてるのかと思った。そうじゃなかったバカにされてたんだ。

        冗談じゃねえや本当にな。

        こんにちは。


    書生:これはこれはお長屋の甚平さんじゃありませんか。なんか御用ですか?


    甚平:えぇー、先生は御臨終ですか?


    書生:暫くおまちください。先生お喜びになると思います。暫くお待ちください。

       先生、お長屋の甚平がおみえになりました。


    先生:来た? ほんと? ふははははははっ。あの人好きなんだよ私は。

       あぁ? え? なに? 今日はハナから飛ばしてる? そうかぁ、いいなぁ。すぐに上げなさい。


    先生:あぁ甚平さんよく来た。よく、うわぁ、良い顔してるねぇ。

        目が血走っちゃってる。期待できるな。大丈夫かい?


    甚平:あい。(舌を鳴らす)ちょっとあのさっき、わけえひとに言うこと間違えちゃったんでもっかいはなからやって構いませんか。


    先生:あっ、何か言いに来たの? なあに?


    甚平:へい、先生はご、ご在宅ですか。


    先生:はい。君の眼の前にね。あんまりそういうこと当人に聞かないもんだろ。

        いいなぁお前じゃないと出来ない芸当だなぁ。今日は期待できるな。大丈夫かい?


    甚平:あい。うっうん、えぇ、うけまたがすれますれば。


    先生:いきなりなに言ってるか分からないなね。股擦れちゃったの? 大丈夫?


    甚平:あい。ここは、かかあが言うには意味はどうでもいいって。

        音で覚えろ。そう言うもんですから、先に行かせて頂きやす。

        お屋敷がお弔いだそうでおめでとうございます。

        御門多い中手前どもにまでお赤灯をありがとうございます。

        以上です。


    先生:ふっははははっ。

        ご苦労様。

        はっはっはっはっ。

        何しに来たんだろうね。

        弱っちゃったな本当にな。喋ってるのは日本語かなぐらいは分かるんだけどね。

        弱っちゃったな。おまえそんなところでひっくり返って笑ってんじゃないよ。

        甚兵衛さんわざわざこうして来てくださってるんだ。

        こっちからなんかキッカケ出してあげないと。

        は? なになに?うん、赤飯? うん、あったあった。おうおう。

        あのお長屋お配りした。うん、それでわざわざ来てくれたの? 

        えっ、あっ、分かった。

        あっ、はなの受け股が擦れますればっての、あれもしかしたら承りますますればってのか。

        お屋敷からお到来物だそうでおめでとうございます。

        御門多い中手前どもにまでお赤飯をありがとう存じますって、

        もしかしてこういう風に言いた。そーだったのかー! 

        一時はどうなることかと。

        そうか、そうか。ありがとありがと。

        うん、でもなんだよ甚兵衛さん。わざわざ来てお礼言わなくても良かったんだよ赤飯ぐらいのことで

        どっかで会ったついでで良かったんだよ。


    甚平:そうでしょ。やっぱりそうでしょ? 

        あっしもそれカカァに言ったんですよ。

        だいたいこれっぱかりの赤飯でもってわざわざ行くことはねえって! 

        カカァが行け行けって言うもんですから嫌々来たんですからね。


    先生:自分で何言ってるか分かんないだろ。

        いいなぁ。お前はね、考えてるから。

        お前はありのままだから。馬鹿にしているわけじゃないんだ。馬鹿にしているわけじゃないんだ。

        そういうのがあたしはそういうのが好きなんだよ。そのまんまが良いんだ。

        おまえさんの前だけどね、お長屋中色んな方がいらっしゃるけどね、

        お前さんの事がなんだね、一番大好きなんだよ。


    甚平:そうっすか。あっしはあんま先生好きじゃねえですけど。


    先生:そういうのが好きなんだよ。たまらないな、どうもな。はっはっはっ、どうもありがとうね。


    甚平:どういたしまして。あの、お屋敷で何かあったんですか。


    先生:話をしてなかったか。お嬢様がいらっしゃったんだ。

        そのお嬢様が患って、あたしがお出入りして頂いてるからお薬を差し上げて、

        この度はご病気が治ったんだ。まぁ、こういうわけだよ。


    甚平:あぁあぁあぁ、あっ、先生が薬あげたから病気が治ってそれがめでてえと。

        うぉっ、はっはっはっ。珍しくこともあるもんですね。


    先生:言葉が胸を突き抜けるね! どうもありがとう。


    甚平:怒ってます? なんか色んな物貰ったんでしょ?


    先生:頂いたなぁ。そうだお前さんが当てている珍しい物、そら熊の皮ですよ。


    甚平:えっえっ? なんすか?


    先生:そら熊の皮。


    甚平:あっ、これ? これが? そうなんすか。へぇー。これ、何で出来てるんですか?


    先生:ドキッとするような質問だね。

        なにで出来てるって、そりゃなんでしょ。熊の皮で答えとしてはいっぱいいっぱいなんだけど。

        そのまま覚えてちょうだい。それ熊の皮。


    甚平:そうなんすか。あぁあぁ、山にいる熊。

        こんなんなっちゃったんですか。

        なんか悪いことしたんすか? 

        あぁ、気の毒に。

        えぇ? こんなとこ置いて何してるんです?


    先生:置いてあるんじゃない敷いてあるんだよ。


    甚平:敷いてあるってますと?


    先生:敷物でしょ。


    甚平:敷物ってますと?


    先生:敷物ってますとって突き当たりまで聞かれても困る。

        しっかり聞いとくれ。そら、なんだ尻に敷くもんだよ!


    甚平:尻に・・・(手を叩く)先生、ありがとうございます。

        肝心なこと忘れてました。聞いてください。

        女房が宜しく言ってました。



    どうも、だらしのない生活をすることにかけては右に出るものは居ない私です。こんにちは。

    ふと思い出したのですが、私がよく落語の枕で喋っている鉄板ネタをこちらのブログにて書いたことがなかったので、備忘録がてら文章化しようと思います。


    「卒業文集」

    えー、皆さんもね幼い頃の夢なんてぇものがあったと思うんですけど、
    こう見えてもね、私にも夢があったんですよ。まぁ今は夢も希望もないけどね。
    この間、実家に帰った時に幼稚園の長男ぐらいかな? そんときに書いた夢ってのを見つけたんですよ。
    将来なりたいもの、「たこ焼き」って書いてました。
    たこ焼きですよたこ焼き。たこ焼き屋さんじゃないんですよ。たこ焼きそのものになりたかったみたいなんですよ。可愛いでしょ?
    小学校三年生のときに書いた夢ってのもありました。
    やっぱりね、物心が付いてきたから夢の内容が少し具体的になってんですよ。
    小学校三年生のときの夢、「ドラゴンボールのサイヤ人になりたい」
    流行ってたからね、流行ってたから将来なりたかったんでしょうね。でもだいたいあいつら無職なんだけどね。
    小学校六年生の時に書いた夢なんてぇのもありました。
    十年後自分はどうなってるかってのを卒業文集で書いたんですね。
    今日はね、特別にこの卒業文集を読んでみたいと思います。

    (扇子を拡げる)

    卒業文集!! 六年一組 ○○○○!! あっ、本名○○〇〇って言います。宜しくお願いします。

    「十年後のぼくは、コックをめざしフランスに旅だっています。
     そして、みんなにおいしい料理を食べてもらいたいです。
     フランス語を勉強して、フランスに自分の店を開きたいです。
     日本の料理やフランスの料理をメニューにとり入れて、おいしい料理をみんなに食べてもらいたいです。
     朝五時半に起きて料理のしょくざいを市場などで手に入れて、朝十時に開店です。
     ぼくの目標は、一日、一億人が来ることです。
     昼は、三時におわります。夜は、七時にはじめて12時におわって一日が終わります。
     一日であつまったお金は、目標、四億円です。
     アルバイトの人数は、三十二人でもちろんぼくはここのシェフです。
     料理の平きんねだんは、二千円で、自分の店は五十つぼで、テーブルの数は三十個で、イスの数は百二十個です。
     いつもまんせきで、行列のできる店にしたいです。
     そんな店をもちたいです。」 


    えー、色々とツッコミ処があったと思うので、一つ一つツッコんでいこうと思います。
    まずね、一番にツッコまなきゃいけないのはここだよね。
    「ぼくの目標は、一日、一億人が来ることです」
    凄い発言だよねこれ。あのね、ディズニーランドの年間来場者数が三千万人なの。その3倍の数がね、一日で店に来るんだよ。このときね、あたしフランスに店を出したいつってるけどね、フランスの総人口、6700万ぐらいしないないんだよ。もうフランスだけでは賄えない。スケールがでかいねぇ。
    これも問題発言なんだけど、問題はね、この後だよこの後。
    「一日であつまったお金は、目標、四億円です。」
    ねっ、一日にね、一日に一億人が来るの。で、集まったお金が四億円。
    単純計算で一人頭四円だよ。四円。一日で潰れるよこれ。
    この後もこれだよ。
    「アルバイトの人数は三十二人で」
    三十二人じゃ足りねぇよ!!
    「もちろんぼくはここのシェフです」
    ってあたりめぇだよお前。お前の店なんだから。そんでなんで非正規雇用の人数を紹介した。正規雇用はいねえのか!?
    「料理の平きんねだんは、二千円で、自分の店は五十つぼで、テーブルの数は三十個で、イスの数は百二十個です。」
    もうね平均値段とか五十坪とかはもうどうでもいいんだよ。この後だよ。テーブルの数は三十個でイスの数が百二十。一つのテーブルに付きイスが4つずつ。
    ここの計算はできてんだよ!!ここはできてんだよ!!肝心の計算が何一つできてねぇんだよ!!!
    「いつもまんせきで、行列のできる店にしたいです。」
    そらいつも満席だよ。一億人来るのに五十坪しかねぇんだもん。どやったって捌ききれねえよ。

    これをね、あたしが小学校六年生の時に書いてんですよ。
    ねっ、なにより凄いのがね、そんとき碌に包丁も握ったことがなかったんだよね。
    まぁ、こんな適当なこと書いてるから、今こんな商売してんのかもしれませんが・・・






    というわけで、いかがだったでしょうか。
    この枕を喋って滑ったことは今のとこ一度もないですね。
    むしろ本編の落語よりもウケルことがあるから困ったりもする。
    これ卒業文集をそのまま文章化してるから、ひらがなの多さで私のアホさ加減がさらに際立っていますね。

    以上、鉄板の枕ネタその1でした。
    その2以降は気が向いたときに投稿します。
    志ん朝師匠の真田小僧(前半)を文章化したものです。
    自分で演じるときはこれから色々と変えていきます。

    おとっつあん。おとっつあん。
    なんだよ。
    へっ、あのー、肩叩いてやろうか?
    いいよ。
    だって、あのー、お疲れでしょ?
    いいんだ。疲れてないんだ。なっ、肩凝ってねえからいいんだ。
    んん、んなこと言わないで。じゃあ腰さすってやろうか?
    いいよ。
    お茶入れようか?
    うるせえなてめえは。えぇ? おとっつあん、たまの休みだ。なぁ、のんびりしてんだよ。この辺でうろちょろうろちょろするんじゃねえよ。うるせえから。表行って遊んできな。
    んなー折角さあたいがさ親孝行しようと思っているとさ、そうやって避けるんだからねぇ。んんーこっちが歩み寄っててんのに。ねえおとっつあん。親孝行させて
    いいよ。普段からやるならやれ。なっ、普段こっちの言うことを何も聞かねえでもって、え? なんか急にそういうこと始めるんだ。なっ、必ず下心あるにちげえねえや。わかってるよ。早く表遊びに行きな。
    いいよ、遊びに行くよ。遊びに行くからさ、おくれよ。
    えっ?
    おくれよ。
    なにを?
    なにをって、んなー分かってるくせに。へへっ、子供が親にくれってそう言ってんだから。まさか首じゃぁねえよ。
    あたりまえだよ。恐ろしいこと言いやがるこんちくしょうは。えっ、首取られてたまるか。なんだい、言ってみなよ。
    へへっ、おあしおくれ。
    なにを?
    おあしおくれよ。
    男の子らしくはっきり言いな。なんだ?
    分かってるくせにああやって本当に。おあしおくれえぇえよ。
    節つけやがってこんちくしょうは。おあしはさっきおめえにやったろ?
    もう使っちゃったんだよ。
    使っちゃったんじゃだめだよ。なっ、もうやらねえ。
    そんなこと言わずにいいじゃねえか、ねえ、表行くからさぁ。一文無しなんだもんあたい。表出たって心細いんだよ。
    生意気なこと言うんじゃねえよ。えっ、大人じゃあるめえしおめえ子供なんてえのはな、もともと一文無しなもんなんだよ。なっ、おめえ銭なくたって表行って遊べるだろ幾らでも。えっ、何言ってやんなえ。
    そりゃ遊べないことはないけどさ、ここであたいが表へつーっと行くだろ? みんな菓子屋の前にたかってんだよ? あたいもそこ行くじゃねえか。そうするとみんながお菓子買って食べてんの。それこっちは食べたいなと思ってもおあしないから買えないだろ? 人が食べてんのうまそうだなぁなんてんでね、見てるのはとても辛いもんだよおとっつあん。我が子にそんなひもじい思いさせてよく親として平気でいられるね。
    なに言いやんだこんちくしょう。おめえにはちゃんと銭やってるじゃねえかよおとっつあん。毎日毎日きちんきちんと小遣いやってるんだ。生意気なこと言うんじゃねえやい。
    だってそれ使っちゃったんだ。
    使っちゃったのはお前が悪いんだから。もう今日はやらねえよ。
    あっそう? じゃあ明日の分おくれよ。
    小遣いの前借しやがる。明日になったらどうすんだこまんだろてめえは。
    明日になったら明後日の分貰っちゃうんだ。明後日になったら明々後日の分貰う。明々後日になったらヤノ明後日の分貰う。順に順に先貰ってっちゃう。そのうちにおとっつあんぼんやりしてるからわかんなくなっちゃう。
    こういう野郎だ。親を馬鹿にしてやがる。えぇ? だめだよ。やらねえ。だめだ。
    あっ、そう? どうしてもくれないの? いいよ。いいよ! 貰わないよ。本当に。おとっつあんに貰わなきゃいいんだい。おっかさんに貰うからいいよ。
    馬鹿野郎何を言ってやんだい。おっかぁはくれやしないよ。なぁ、おっかあが持ってる金ってえのはな、おとっつあんが表行って稼いできて、えぇ? 預かってるよっていう預けてあるおあしだ。えぇ? おとっつあんがあいつにやっちゃいけねえぞって言やな、おっかさんくれやしないんだい。
    にっへっへっ、そんなこと言ってやがる。だから甘いんだよへっへっ。くれるんだよおっかぁ。ねっ、おっかさん帰ってくるだろ? そうするとあたいが行ってね、おっかさんおあしおくれよぉ! って言うとね、
    ダメですよ。おとっつあんがやっちゃいけないって言ったから、やりませんよ。
    って言うだろ? そうするとあたいが。じゃあいいよ。この間おとっつあんの留守に他所のオジサン訪ねてきたことそう言っちゃうからって言うと、
    ちょいとお待ちよちょいとお待ちよ。分かった今やるよって必ずくれるんだよ。2、3度使っちゃったんだその手で。親ゆすんの嫌だけどな。背に腹は代えられねえ。
    ちょっと待て。ちょっと待ちない。
    いやぁ、いいよ。あたい遊びに行くから!
    いぃ、いぃからこっちに来い。こっちに来いってんだよ。えぇ? そこに座れ。おとっつあんの留守にだれかおっかさんのとこに訪ねてきたのか?
    んなぁ、なぁ、なんでもないなんでもないよ。気にしちゃいけないんだおとっつあん。聞かなかったことにしておくれよぉ。あぁ、まずいこと言っちゃったなぁ。
    なんだ? えぇ? だからおとっつあん聞いてんじゃねえか。なんか誰か訪ねて来たのか? えぇ? おとっつあんの御用のある人だといけねえから聞いてんだ。
    おとっ、おとっつあんには御用はない。おとっつあんには用はない。弱っちゃったなぁ。まずいこと言っちゃったなぁ。はぁー。やっぱ表に遊びに
    おい、待ちなてんだよ。えぇ? 誰か訪ねて来たのか? 言ってみな。
    じゃあ言うけどさ。訪ねて来たことは訪ねて来たんだ。
    ほぅ、だれが。
    いや、誰がって。おとっつあん、この噺聞きたいかい?
    そりゃまぁ聞きたいよ。
    じゃぁ、おあしおくれよ。
    おあしはダメだよ。
    じゃぁ、あたいだって噺しないよ? ねっ、うん、これを噺すのは子供としてとっても辛いんだから。辛いことを喋るんだから。おあしくれなきゃダメだよ。
    何を言ってやんだい。じゃあいいよ。
    なら良かったやい。そりゃその方がいいんだ。ねっ、平和な家庭に波風立てるのは嫌だから。
    妙なこと言ってやる本当に。えぇ? わかったよ。今やるからちょっと待て。んん? ったく本当に。おう。やるから。話しをしてみな。
    へい。あっはっはっ、あー、なにこれおとっつあん。1銭じゃねえかこれ。1銭、1銭じゃダメなんだよこの噺。1銭はこれお引き取り願って。1銭じゃダメだ。
    子供なんだ1銭持ってりゃ沢山だ。
    そりゃこれは1銭じゃとてもじゃねえけど、こりゃ聞かせられねんだよ。これ値打ちのある噺なんだから。うん、5銭おくれよ。
    5、5銭? 冗談言っちゃいけねえや本当に。だれがやるかい5銭なんざ。
    あっそう? じゃあいいよ。話さないよ。
    じゃあ分かった。5銭やるよ。噺をしちゃってご覧。そうしたら5銭すっとおめえにやるから。まず噺をしろい。
    それダメそれダメ。それダメなんだよおとっつあん。その手は食わないんだよ。ねっ、噺をしちゃうだろ? そうすると、おあしをおくれって言うとダメだ。こう言われちゃったら今のお話し返してくれってわけにはいかないんだから。ねっ、寄席だって何だってそうでしょ? ねっ、言ったことあるでしょ? あれおあし聞く前に払うの? お話し聞いちゃってから払うの? 
    ありゃ木戸銭ってえから噺聞く前に先に木戸の前で払うんだ。
    そうでしょ? ねぇ。そういうもんだよ。聞いちゃってからおあしよこせっつったって。誰があんなもんにおあし払うか。ねっ、だから先に取っちゃうんだああいうものは。それと同じで先に払ってくれよ。そしたらちゃんとお話しするから。
    妙なこと言ってやがる本当に
    あいよっ。その1銭もやるから。早く噺してみろ。早く噺してみな。
    へへっ、どうもありがとう。あのね、この間さ、横浜にお仕事行ったときあったでしょ?
    横浜? あぁ、あった。
    あんときにね、おとっつあんが出かけると直ぐにね、おっかぁのとこにね、「こんちわー」なんてね、男の声が表にすんだい。それからね、あたいがすっと出て行ったらね、「あの、お母さんはいらっしゃいますか?」なんてんだ。それから、いますよって言ったら、「呼んできてもらえますかな」なんて言うからね、おっかっさんどっかのオジサン来たよって言ったら、「あっそうかい」てんで。すっと出てきてその人の顔見て嬉しそうなんだ。
    ふーん、どんな野郎だ。
    おとっつあん。どんな野郎だってね、あんな奴がいるんだ世の中に。キザたったらありゃしねえんだ白い服なんざ着てんだよ。ねっ、やっぱりね、後ろ暗いところがあるのかね、色のついた眼鏡なんざ付けてね? 本当にまぁ気取りやがってステッキなんざこうやってやんだよ。おっかさんがそれを見てね、大変なんだから。
    まぁー、よく来てくれたじゃないかね。ちょうど良かった家のへちま野郎がいなくてって。
    おとっつあんのことへちま野郎だってさ。おとっつあんへちまには似てないやな。
    あたりめえだよ。
    どちらかっていやカボチャだもんな!
    うるせえなこんちくしょう。いいから続きを聞かせろ続きを。
    でね、それでね、おっかさんね、そのオジサンの手をぎゅっと握ったりなんかして、
    さぁこっち入ってよ。早く。
    なんてんでね、引っ張ってやがんだよ!
    おっかあが? うん、で、どうなったい。
    で、こっから先聞きたい?
    そりゃ聞きてえよ。早く話ししろよ。
    じゃあ、あともう5銭おくれよ。
    さっき払ったじゃねえか。
    さっきのはここまでなんだよ。こっから先はまたおあしがいるんだよ。
    そんなこと言わねえでつーっと。喋っちゃったら。
    そりゃいかねんだよ。ねっ、出しておくれよ。
    そうはいかないよこっちだって。
    あっ、そう? じゃあここでやめとこ。ねっ、うん。ここんとこでやめときゃおとっつあんだってまぁまぁ我慢が出来るんだ。こっから先はなぁ。
    分かったよ。分かった。ほら、やるから。
    じゃ、ありがとありがと。それでね、おっかさんがね、あたいが傍にいたらね、
    何してんだよお前は。えぇ? こんなとこにいるんじゃないよ。早く遊び行っといでってこう言うからね。
    嫌だい! って言ったら、
    そんなこと言わないで行っておくれ。後生だから行きなっつうんでね、普段1銭くれるのに大変な騒ぎしてんのにね、そんときに限って5銭くれたんだよ。えぇ? それからあたいね、それ持って嬉しかったんでバーッと表へ遊び行っちゃった。
    馬鹿野郎、馬鹿野郎! なんだいそりゃえぇ? おまえね、そういうときは何故おっかさんの傍にピタッと付いてねんだ馬鹿。
    へっへっへっへへ。大丈夫だよ。心配してんだよ。あたいはおとっつあんの味方だよ。ねっ、えぇ? つーっと表へ遊び行ったんだけどさ、もう気になって気になってしょうがないからね、それからそーっと家に戻ってきたんだおとっつあん。
    うん、えれえな。どうしたい。
    でね、出かけたときにね、開いてた障子がね、かえって来たらピターッと閉まってんだよ。
    障子が? 障子が? うん
    それからあたいがソーッと傍に寄ってってね、この障子をね、スッとおとっつあん、これ開けたい?
    開けたいよ! ちょっと開けてみな。
    へっ、これ開けるのにまた5銭かかるんだ。
    おい、そんなちぎらねえでよぉ。スッと話したらどうだ。
    いやどうしてもここは要るんだ。こっからがおとっつあん大変なんだから。こりゃあもう5銭じゃ安いぐらいだよ。
    本当にもうしょうがねえなぁ。えぇ? うん、ほらほら、早く話してみな。
    どうもありがとう。でね、でね、あたいがね、ソーッ開けたんだよ障子をさ。ねっ、ソーッ開けてねスッと見たらね、おとっつあんの前だけどね。
    おう。
    あのね、布団が引いてあんだよ。
    布団が? 座布団か?
    寝具。 寝るお布団が引いてあんだよ。ねっ、そしたらね、おっかさんが
    それじゃぁ・・・なんつってね、そのオジサンの手を取ってね、自分から誘い込むようにしてね、お布団のとこにたぁーっと倒れこんだんだよ。
    ふんふん!
    ねっ、そしたらそのオジサンがね、上から覆いかぶさるように行ったんだ。
    うん!
    で、ここで5銭くれる?
    この野郎。(直ぐに渡して)どうした!!
    でね、そのオジサンがね、そ、そこら中ね、やだなぁ。やだ。だけど話すよ? ねっ、おっかさんの身体。触んだよ。えっ? そしたらおっかさんが。そこそこなんて言うんだよ? うんっなんて声出したりして。もう嫌だったなぁ! うん、それでね、スッとそのオジサンの顔見たらね、そのオジサンのことあたい知ってんだよ!
    おめえの知ってる? 誰だ!!
    誰だつったって。おとっつあんも知ってるよ!
    俺も知ってる? 誰だ言ってみろ!
    あの、これ、10銭おくれよ。
    10、おまえ高いよそりゃ。10銭は高いよ。
    高くない。高くないよ。おとっつあん。たかが10銭じゃねえか。10銭だよお出しよ。教えてやるからさ。ねっ、知りたくなかったらいいんだよ。ねっ、誰だか分からない方がごたごたが起きないからその方がいいんだ。ねっ、人情沙汰になるといけないから。
    待ってろ待ってろ。分かった分かった。えっ、よっとほらほら
    ありがとありがと。
    で、誰だ。言え。言ってみろ。
    あのね、横町の按摩さんがおっかさんの肩揉みに来てたの! どうもありがとう!!
    待てぇーこんちくしょう! 本当に悪い野郎だなあんちくしょうは。ああいうことをしやがんだから本当に。
    どうしたんだい? 
    こっち上がんなよ。おめえが早く帰って来ないからよ、おあしとられちゃったい。
    あらやだ泥棒にかい?
    そうじゃねえよ金坊にだよ。騙し取られちまったんだよ。
    あの子は口が上手いからねぇ。なんてって騙し取られちゃったの?
    なんてってって、この噺聞きたいかい? だったらおめえも10銭出しな。
    先日、行われた演芸大会にて演じたものをアップする。

    久方ぶりに寿限無を人前で披露した。

    出来栄えは聴いてからご確認ください。

    【寿限無】