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    通りすがりのカップルを見ても微笑ましいと思えるほど精神的にキテいる私です。どうも、こんばんは。

    私が新作を待ち望んでいる数少ない作家の一人である恒川光太郎の新刊が10月に発売していたことに気づき、大慌てで単行本を購入してきた。

    新作の「金色機械」の文章は、田舎に流れる川のように清く透き通っており、頭にすらすらと情景が入ってきた。少しだけ読もうと思っていたのが一気に引き込まれ、休憩を入れることなく読破してしまった。




    《以下、感想。ネタバレあり》










    題名の金色機械とは何かの比喩かと思ったら、そのまま金色機械が出てきて驚いた。
    江戸時代に未来から訪れ、事故により帰ることの出来なくなった未来人と金色機械(アンドロイド)が物語りの中核の一つを担っているわけだが、その金色機械があまりにも超科学過ぎて、SFものというよりもファンタジーになっている。どれほど超科学かというと、数百年もの間、故障する箇所もなく太陽光によりエネルギーを得て稼動することができ、人工AIを搭載し、膨大なデータを処理できる。命令に忠実であり、人に危害を加えることも可能である。
    恒川光太郎の作品はファンタジーものが多いとはいえ、金色機械があまりにも非現実的過ぎて、忠実に書き示した江戸の雰囲気を台無しにしてしまっている。金色機械が登場するたびにそれは無いと感情が冷めてしまい、素晴らしい物語が陳腐なものと感じてしまう。
    未来からやってきた人々ではなく、地球外生命体が遭難していたことにすればよかったのではないだろうか。地球外生命体を金色機械としても良いし、その地球外生命体のアンドロイドならば、どれほどの超科学を持ち合わせようと構わない。ファーストコンタクトものとしても描いても良い。この設定を詰めれば、ファンタジーではなくSFの域になるであろうので、あり得ないと一蹴できずに魅力も増すのではないかと思う。
    また、遥香の能力であるが、地球外生命体との地球人との勾配によりDNAの変異が起こり、人間では持ち得ない異能力が生じたことにすれば、一つ筋が通るのではないだろうか。そうすれば、金色機械が手助けを行うことにも理由を得る。

    金色機械は置いておき、物語の構成について語る。
    面白い試みをしており、
    一番最初は1747年の熊梧郎を主点に遥香との会話。
    次に1737-1746の遥香を主点とした物語。その次が1717-1722の熊梧郎。
    といった風に西暦や主点を変え、三人称で幾つもの登場人物の物語を描いている。そしてその物語が一つに繋がっていくという形をとっている。
    途中で登場人物たちよりも読者の方が状況の理解が深くなるので、もどかしく感じることもあるが、幾つもの物語を読むことができ、面白い。これを作るのは相当の苦労があっただろうと分かる。

    総評として、文章表現も巧く、構成や一つ一つの物語は面白いので、金色機械がファンタジーではなくSF寄りの機械であれば傑作になっただろうと感じる。

    恒川光太郎といえば、ファンタジーホラーをイメージしてしまうが、今回の作品はそのイメージを一新し、新たな分野へと歩みだしており、今後の活躍が期待できる。

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